国際税務ニュースレター 2013年4月号「関係会社間における金銭消費貸借取引」
日税国際税務フォーラム
国際税務ニュースレター
2013年4月号
今回のテーマ:関係会社間における金銭消費貸借取引
2012年9月、東証1部上場のキノコ栽培大手「ホクト」が、関東信越国税局の税務調査を受け、米国子会社への貸付金を巡り、金利が不当に低く海外に所得を移転したとして移転価格税制を適用され、2011年3月期までの5年間で10億円弱の申告漏れを指摘されたとの報道がありました。
金銭の貸付や借入に伴う利息は営業外損益として取り扱われますが、棚卸資産の売買と同様に移転価格税制が適用され、金利の独立企業間価格との間に差があれば課税処分が行われることになります。
1.独立企業間価格の算定方法の選定
貸付金利の独立企業間価格の算定にあたっては、最も適切な方法を事案に応じて選定する必要がありますが、独立価格比準法と同等の方法又は原価基準法と同等の方法を適用する場合には、国外関連取引と同一の通貨、貸借時期、貸借期間、金利の設定方式(固定又は変動、単利又は複利等)、利払方法(前払、後払等)、借手の信用力、担保及び保証の有無等が同様であるような比較対象取引があることが必要です(租税特別措置法関係通達66の4(7)-4)。
2.金銭貸付けを業としない事業会社に認められる算定方法
但し、1.のような比較対象取引に関する情報を一般の事業会社が入手することは実現可能性に難があることから、金銭の貸付等を業としない一般の事業会社については、以下のような方法で算定することが認められます(移転価格事務運営要領2-7)。
(1)借手の銀行調達利率(通貨、貸借時期、貸借期間等が同様であることが必要)
(2)貸手の銀行調達利率 (通貨、貸借時期、貸借期間等が同様であることが必要)
(3)国債等による運用利率 (通貨、取引時期、期間等が同様であることが必要)
ただし、独立企業原則に則した結果は(1)、(2)及び(3)の順に得られるとされていますので、最初に(1)の情報が入手可能かどうかを検討する必要があります。
金利の決定要因のうち、通貨(円、米ドルなど)、期間(1年物や5年物)などは、市場における相場等により決まるものですが、借手の信用力に応じたスプレッド情報(銀行等の利益に相当する金利)を市場から入手することは困難です。貸手にとっても、銀行等からの借入実績があるか、スプレッド借入を行うとした場合の金利情報を入手できない限り、調達利率を算定することは困難です。よって、借手または貸手に銀行等からの借入実績がないと、(1)または(2)の方法を用いることは難しいと考えられます。
(3)については、借手と国の信用力が同じであるかのような取扱いですが、同様の条件、同一の通貨の国債で運用した場合に得られるであろう金利、すなわち、機会コストをもって独立企業間価格として取り扱うものであると考えられます。
また、事務運営要領の文言上明らかですが、(2)の調達利率には、貸手である事業会社のスプレッドを上乗せする必要はありません。
なお、金銭の貸付が手持資金によるものか、借入資金によるものかの違いによる取扱いの差はありません(別冊 移転価格税制の適用に当たっての参考事例集 事例4 前提条件2 解説)。
お見逃しなく!
業績不振の子会社等の倒産を防止するために、やむを得ず同様の条件で行われるもので合理的な再建計画に基づくものである等、合理的な理由により低利又は無利息としている場合(法人税基本通達9-4-2の適用がある場合)には、移転価格税制上も適正な取引として取り扱われます(移転価格事務運営要領2-6(1))。
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