今回のテーマ:英国におけるグループリリーフ制度
日税国際税務フォーラム
国際税務ニュースレター
2015年5月号
今回のテーマ:英国におけるグループリリーフ制度
平成27年の税制改正にて我が国のタックスヘイブン税制が適用される租税負担割合(トリガー税率)が
20%以下から20%未満に変更になりました。
当該改正は、英国の法人税率が20%に引き下げられたことを受けてのことであると言われています。
結果、英国はこれまで通り、投資先として、また持株会社設立国として魅力的な国としての地位を保つことができます。
今回は、その英国の優遇税制の一つであるグループリリーフ制度をご紹介します。
1. グループリリーフ制度の概要
グループリリーフ制度とは、グループ会社間で損失を英国法人に移転することにより、
グループ会社間の損益通算を可能にする制度です。
英国には連結納税制度はありませんが、グループリリーフ制度はグループ会社間で損失を移転する
という手続きであることから、会計処理方法や事業年度の統一を要せず、通常の連結納税制度よりも簡単に適用できます。
2. グループリリーフ制度の範囲
グループリリーフ制度の適用対象となるグループ会社とは、一方の会社が他方の会社の普通株式の
75%以上を所有する関係又は共通の親会社が両方の会社の普通株式の75%以上を所有する場合
の両子会社の関係をいいます。
つまり、日本の親会社がその普通株式の75%以上を保有している英国子会社間においても
当該制度を適用することができます。
グループリリーフ制度の適用は英国法人間のみに限られていましたが、2006年4月より、
グループ会社の所在地国の範囲にEU加盟国が含まれることとなり、EU加盟国とグループ関係にある
英国法人が一定の要件を満たした場合、EU加盟国の損失を英国法人に移転することが可能になりました。
ただし、UK親会社に移転した損失は、子会社所在地国では使えなくなります。
なお、グループリリーフの対象になっている損失とは、事業により生じた損失に限定されています。
お見逃しなく!
日本企業の英国子会社がグループリリーフ制度の適用を受けている場合、
当該子会社が他のグループ企業から移転を受けて所得から控除した損失は、
租税負担割合(英国子会社の法人税/英国の法令に基づく所得金額+英国の非課税所得)の算定において、
英国の非課税所得に該当するのかという問題があります。
非課税所得に該当する場合、租税負担割合が通常時の法人税率(20%)よりも低くなり、
英国子会社は日本のタックスヘイブン税制の適用を受ける可能性があります。
この点に関しては、損失の移転を受けた英国子会社にとっては、恒久的に所得が生じませんが、
損失を移転したグループ会社は、代替的に課税されますので、これらの状況から非課税所得には
該当しないとする考え方が発表されています
(平成26年6月25日「外国子会社合算課税(タックス・ヘイブン対策税制)の課税上の取扱いについて」国際課税実務検討会)。