国際税務ニュースレター:過大支払利子税制
いよいよ年末が近づいてきました。
外資系企業対応の税理士法人わかばです。
年末といえば外資系企業は決算が12月であるということで、
そろそろYear-end closingの検討が始まっていることと思います。
それでは今回の内容に入ります。
今回のテーマ:過大支払利子税制
今回は、関連者間の利子を利用した租税回避行為に対応するために、
平成24年度税制改正において、導入された過大支払利子税制について紹介します。
暦年決算を採用している多くの外資系企業にとっては、平成26年1月1日開始事業年度が、本税制の適用初年度となります。
1. 過大支払利子税制の概要
平成25年4月1日以後開始する事業年度において、法人の関連者純支払利子等の額が調整所得金額の50%を超える場合には、
その超える部分の金額は損金の額に算入されません(措法66の5の2①)。
ただし、以下のいずれかに該当するときは本制度の適用はありません(措法66の5の2④)。
① 関連者への純支払利子等の額が1,000万円以下の場合
② 関連者への支払利子等の額がその事業年度の支払利子等の額の50%以下である場合
2. 関連者支払利子等及び関連者純支払利子等
関連者支払利子等の額とは、法人の関連者等に対する支払利子等の額で、その関連者等の日本における法人税、
所得税の課税所得に含まれないものの金額をいい(措法66の5の2②)、関連者純支払利子等の額とは、
関連者支払利子等の額から控除対象受取利子等の合計額を控除した残額です(措法66の5の2①)。
なお、控除対象受取利子等の額は、以下の数式により計算します(措法66の5の2③)。
対象事業年度における受取利子等の額 × 関連者支払利子等の合計額 / 支払利子等の額
3. 関連者等
本税制における関連者等とは、当該法人との間にいずれか一方の法人が他方の法人の発行済株式等の
50%以上を直接若しくは間接に保有する関係又は個人が当該法人の発行済株式等の50%以上を
直接若しくは間接に保有する関係にあるものをいいます(措法66の5の2②一)。
4. 調整所得金額
調整所得金額とは、寄附金の全額を損金の額に算入して計算した場合の所得金額に、繰越欠損金の損金算入、
外国子会社配当益金不算入、受取配当等の益金不算入等一定の規定を適用せず、かつ、関連者純支払利子等の額、
損金の額に算入される減価償却費及び損金の額に算入される貸倒損失の額を加算した金額になります(措令39の13の2①)。
5. 損金不算入額の繰越
本税制により損金不算入となった金額は7年間繰越し、関連者支払利子等の額が調整所得金額の
50%を満たない事業年度において、その満たない金額を限度として、損金に算入されます(措法66の5の3)。
6. 他税制との適用関係
過少資本税制による損金不算入額が、過大支払利子税制による損金不算入額を下回る場合には、
過少資本税制の規定は適用されません(措法66の5④)。
また、本税制により計算された超過利子額がタックスヘイブン税制における合算課税の対象になる場合には、
超過利子の損金不算入と合算課税の二重課税の状態が生じます。
そこで本税制における損金不算入額の計算において、本来の損金不算入額に、関連者支払利子等の合計額に
占める特定外国子会社等に対する関連者支払利子等の割合を乗じた額を控除する措置が設けられています(措法66の5の2⑧)。
お見逃しなく!
過少資本税制の対象となる国外支配株主等は、非居住者又は外国法人に限定されていましたが、
過大支払利子税制では、親会社である内国法人が海外に進出している子会社に対して支払う利息も含まれることに留意する必要があります。
税理士法人わかばの外資系企業向けサービス
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